遮熱塗料を塗る対象として、私たちの身の回りには下記のようなものがあります。
- 住宅の屋根
- 工場の屋根
- 屋上防水
- 建物の外壁
- 車両
- 道路
遮熱塗料は熱を反射し、建物や物体を涼しく保つ効果があり、これらの場所では遮熱塗料の効果を受けることができます。
本記事では、遮熱塗料を塗る上記の対象について具体的に効果や利点・デメリットも含めた注意点についてご紹介します。
住宅の屋根
住宅の屋根は太陽光の直接受けるため、遮熱塗料の効果が期待できる場所です。
屋根の表面に遮熱塗料を塗ることで、太陽光の反射と熱吸収を調節し建物内部の温度上昇を軽減することができます。
戸建て住宅の屋根に遮熱塗料を塗る時のポイント
住宅の場合、遮熱塗料の効果が得られるのは屋根の階下の部屋になり、夏場のエアコン使用量を減らすことが出来ます。
住宅の屋根に遮熱塗料を塗った時の効果は、屋根の表面でマイナス10℃程度は期待できます。
室内の温度変化は室内の設計環境にもよりますが、マイナス2℃程度と言われています。
室内の温度が夏場に2℃下がった時の節電(節約)の効果は、エアコンの電気代が安くなることが目安です。
平均的な戸建て住宅では概ね年間5,000円程度節約できる計算です。
工場の屋根
工場の屋根は住宅の屋根よりも熱くなる傾向にあるため、遮熱塗料の効果が最も期待できます。
なぜなら、工場などの屋根は最も熱くなりやすいからです。
工場などの屋根に遮熱塗料を塗る時のポイント
一般的に工場の屋根は「折板」という金属です。
金属の特性は熱伝導率の高さなので、太陽光が当たるとすぐに屋根表面の温度が室内側まで伝わってしまいます。
屋根裏に断熱材はあっても薄いので室内はとても暑くなりやすいため、逆に遮熱塗料の効果は一番期待が出来るでしょう。
屋上防水
ビルなどの屋上形式は陸屋根と言い、屋根材ではなく防水により雨漏りを防いでいます。
防水面は真上を向いているので当然太陽光がしっかり当たります。
防水面に遮熱塗料を塗ることで得られる遮熱効果により、屋上の温度上昇を抑え建物内部の熱負荷を軽減できます。
また、屋上を利用したい場合に床面の温度が低く抑えられることにより過ごしやすくなるでしょう。
ただ、屋上防水は元々の色がグレーである事が多く、遮熱塗料の効果を感じにくい可能性もあるので注意が必要です。
屋上防水に遮熱塗料を塗る時のポイント
遮熱塗料は太陽光を反射させることで効果を得ているのですが、そもそもグレー色であれば遮熱機能の無い塗料でもかなりの太陽光を反射させてしまっているからです。
屋上防水に遮熱塗料を塗ろうとする場合は、過度な期待を持たない方がよいでしょう。
建物の外壁
屋根に塗るなら、建物の外壁にも遮熱塗料を塗ると室内温度が下がりそうです。
よく「外壁は直射日光を受けることが多いため、遮熱効果により建物内部の温度上昇を抑えることができます」と言われたり、遮熱塗料のカタログなどには書いてあるかもしれません。
ただし、戸建て住宅の外壁に遮熱塗料を塗る場合は一定の条件を満たさないと効果は期待できないので注意が必要です。
建物の外壁に遮熱塗料を塗る時のポイント
その外壁に遮熱塗料を塗っての効果が期待できる家の条件とは、以下のような「熱くなりがちな家」の場合です。
- 金属の外壁で出来ている
- 現状の外壁の色が濃い
- 戸建て住宅でよくある張り出したベランダが無い
- 南面と西面に窓が少ない
- 南面と西面が開けていて、太陽光が良く当たる
一般住宅でこのような条件が当てはまることは稀ですが、当てはまる場合は遮熱塗料の効果が期待できます。
車両
真夏の車内は本当に熱いですね。
自動車のボディーは一般的に鉄なので、遮熱塗料を塗ってあれば熱くならなそうです。
ただ、そうは思って調べてみると意外と採用例が1つしか見つかりませんでした。
さらにその遮熱塗料の色も途中で廃止になっています。
廃止の理由が不人気だったからなのか、効果が無かったからなのか分かりませんが…
効果があれば続いていたのかな?とは思ってしまいます。
やはり全身鉄板のボディーに当たる太陽光を反射出来たとしても、効果を体感できるまでには行かないのかもしれませんね。
道路
遮熱塗料は道路表面の温度上昇を緩和し、アスファルトやコンクリートの劣化を抑制するために使用されます。
熱反射性の高い遮熱塗料を塗ることで、太陽光の吸収を減らし、道路表面の温度を下げる効果が期待されます。
これにより、道路の耐久性や走行時の快適性を向上させることができます。
遮熱性舗装の商品実例
遮熱性舗装のメーカー・商品を調べてみましたので紹介します。
大有建設株式会社 タフ・カットシリーズ
- タフ・カットU/タフ・カットLS
高い耐久性を要求される車道用 - タフ・カットW
遮熱性舗装〔歩道用〕
株式会社ミラクール ミラクールシリーズ
- ミラクールロードM
重交通道路から軽交通道路向け 2液硬化型遮熱性舗装 - ミラクールロードW
軽交通道路から歩行者系道路向け エマルジョン型遮熱性舗装 - ミラクールリペア
遮熱性舗装(濃灰色)の小規模復旧用キット 2液硬化型遮熱性舗装
遮熱性舗装の注意点
遮熱性舗装について調べていて、興味深い記事を見つけました。
この記事によると、遮熱性舗装を施した道路では表面温度は低く抑えられるものの…
「高さ50センチ、150センチ、200センチではいずれもアスファルトより遮熱性舗装の方が高かった。」
…という結果が得られたとの事でした。
とは言え、これは驚く程のことでは無く、当然の結果なのだと思います。
なぜなら、遮熱塗料は「太陽光を反射させる」ので、反射させた先が熱くなるのは当然だからです。
なんとなく、外壁でも屋根でも道路でも、反射させてしまえばその光エネルギー(=熱エネルギー)はどこかへ無くなってしまいそうな気がしますが、そうではありません。
砂浜や雪上でも反射で日焼けするように、反射の相手先に熱源を「反射」させているだけです。
同記事の中で遮熱性舗装の場合は…
高さ50センチが最もアスファルトとの差が大きかった。
「小さな子ども、ベビーカーに乗った赤ちゃん、車いすの人が特に影響を受けるということです。
という、ごく当たり前に思える結果を示しています。
まとめ
遮熱塗料は対象によって効果や利点、デメリットが異なります。
その効果を最大限に引き出すためには、対象の特性や条件を考慮する必要があるでしょう。
特に遮熱性舗装の部分に集約しましたが、遮熱塗料は太陽光を反射させることで光が当たっている面の温度上昇を抑える効果を出します。
逆に言えば、鏡で太陽光線を反射させて眩しくさせるイタズラのように、反射先に光を当てる作用があります。
遮熱塗料を塗る際にはこの点に留意し、反射させた先の事も考えておかないと相手先とのトラブルになる可能性もあります。